手軽になった「シルク」、性質を知ったら洗濯するのも怖くない!

世界遺産に登録された群馬県の「富岡製糸場」は、明治時代に作られた「生糸」(きいと)を作る為の工場です。生糸とは絹糸のことで、この生糸を元にシルク製品が作られます。

シルクというと、「お手入れが大変そう」と思っている方も多いようですが、その性質がわかればそれほど難しくありません。

生糸は、蚕(かいこ)という蛾の仲間が作る繭(まゆ)から作られます。蚕が蛹(さなぎ)になるときに、自分の体の周りに細い糸状の物(生糸)を出して繭を作ります。その長さは1500メートルとも言われます。

生糸の成分は「シルクプロテイン」というたんぱく質です。生糸の断面は三角形で、これが光沢につながります。内側はフィブロインという繊維質のたんぱく質、外側はセリシンという硬たんぱく質です。

生糸の太さは、2~3デニールです。デニールは元々生糸の太さを表す単位で、長さ450mで重さが0.05gのものを1デニールといいます。女性の方が冬場に履くタイツが80デニール位なので、その細さが想像できると思います。

絹は紀元前の中国で発見されたと言われています。その時代は蚕から糸を作る方法は門外不出で、絹織物は金と同等の価格で取引された時期もありました。中国から西方に向けて絹を運ぶための道が「シルク・ロード」です。その後、6世紀頃にはヨーロッパなどでも絹織物が作られるようになりました。

絹を作る技術が日本に渡ったのは弥生時代です。その後、明治時代に入り、近代化した工場で作った絹糸は輸出にも使われました。その際、品質を一定に保つために富岡製糸場などの模範製糸場が作られました。

現在、日本国内で使われる絹糸のうち国内生産されているのは1割程度で、あとは中国・インド・ブラジルなどから輸入されています。国産の絹糸は柔らかく光沢も有り高評価です。輸入の絹糸ではブラジル産が品質も良く、高級品として取引されています。

繭からとった糸は、まとまった長さの長繊維(フィラメント)の部分が一番上質で、羽二重(和服の裏地などに使う)やネクタイ、下着などに使われます。

その後に残った短繊維の部分を紡績したものが絹紡糸として絹の靴下などに使われます。

繭のセリシンをお湯の中で溶かして伸ばし塊にしたものは「真綿」(まわた)と呼ばれ、布団の綿の最高級品になります。

このように絹と絹製品が貴重なものとして扱われるのには理由があります。絹には上品な光沢があり、繊維が細いので柔らかくて肌さわりもよく、保温性、吸湿性にすぐれています。絹は夏は清涼感を感じ、冬は暖かさを感じられる素材です。

絹の下着をつけて汗をかいても体が冷えないということで、南極探検や冬山に登る時にも使われています。

ただ、繊維が細いので摩擦に弱く、水でシミにになったり太陽光で色あせする可能性があります。

絹製品のお手入れをするのに気をつけたいのは、絹がたんぱく質で出来ているのを忘れず、髪やお肌と同じように扱うことです。細かい指示は洗濯表示用のタグに書いてあると思いますが、洗濯機ではなく手洗いをおすすめします。

ぬるま湯にシルク用の洗剤を溶かし、裏返したシルクを入れ、優しく押し洗いします。その後、数回すすぎます。柔軟剤は使いません。専用洗剤がなかかったら、髪用のシャンプーを使っても構いません。

脱水は水分を切る程度にして、裏返したまま伸ばし陰干しすると大半のシワは残りません。乾燥機は使わないでください。もしアイロンを掛けるなら生乾きの状態か充分霧を吹いてから行います。

シルク製品は、お値段は安く有りませんが、その肌触りは他の繊維には出せないものです。身近なものから取り入れてみてはいかがでしょうか。

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